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こうした進化を見ていると、元来、図
書館が持つ資料の収集、所蔵、貸し出し
という役割よりも、学習の機会や場所を
提供する「公共スペース」としての側面
が重視されていることがわかる。初めて
高雄市立図書館を訪れた時、学生であふ
れる館内を見て、その機能は十分に果た
されていると感じた。若者が図書館に通
う習慣は、今後、無形の財産として地域
に還元されていくことだろう。
高雄市立図書館の隣では、書店や旅
館からなる「文創大楼」の建設が進行
中。収益は図書館の運営費に充てられ
るそうで、商業施設との連携に注目が
集まる。〝知識の木〟がどのように育
っていくのか、今から楽しみだ。
湾ではいま公共図書館が大きく生ま
れ変わっている。その先駆けとなった
のが、台湾第二の都市・高雄で
2014
に開館した「高雄市立図書館本館」で
ある。進化する台湾図書館の現状と、
果たす役割について考えた。
高雄に誕生した知識の木
高雄市立図書館を訪れた人は皆、一様に
驚く。ガラス張りの美しい外観と、新刊
本を平積みし、オシャレなカフェまで備
えた館内に、図書館の概念を大きく覆さ
れるからだ。台湾の建築家・劉培森が手
1
Kaohsiung Public Library is
located next to 85 Sky Tower.
The Port of Kaohsiung is vis-
ible from the windows in the
west part of the building.
2
The
library is the world
s first green
building with a suspension de-
sign. The ground floor features
a 7.5m ceiling and a column-
less space for an unobstructed
view.
3-4
A large interior void
and rooftop garden help funnel
light into the library.
1
高雄の象徴
85
ビルからすぐ、西
側の窓から高雄港が見える
2
界を遮る柱もない1階部分
3-4
内中央にも吹き抜けの中庭があり
開放感抜群
がけたこの建築のコンセプトは〝知識の
木〟。「吊り下げ式」という新しい建築
方法を採用し、全
8
階を大きな4本の柱
で支えているのが特徴で、
1
階はまるで
木陰のように吹き抜けている。
「高雄市民にとって、自分と街への贈
り物となる施設を」と、図書館の建設に
動いた高雄市長の陳菊氏は、大学で図書
館科を専攻し、高雄市内に
11
の図書館を
作った人物。彼女の手腕もさることなが
ら、高雄市内の企業や資産家による経済
支援も大きく、開館時
70
万冊にのぼる蔵
書の購入はすべて寄付金でまかなってい
る。開館後も市民は
1
300
元で本を寄贈
でき、寄贈本には自分の名前とメッセー
ジを刻印できるという。まさしく市民み
んなで作り上げている図書館なのだ。
公共スペースとしての図書館
高雄市立図書館に続く形で、
2015
5
に新北市板橋にリニューアルオープンし
た新北市立図書館本館も、図書館の新し
い使い方を提案している。目玉はなんと
いっても
24
時間開館を実現したこと。ネ
ット環境は完璧で、個性あふれる閲覧室
やマルチメディアルームなど特色ある設
備でも人気を集めている。
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